会計方針の変更があった場合の取扱い

過年度遡及修正会計基準の解説 | 2013年10月13日

今回は、弊社オリジナルの連載特集【過年度遡及修正会計基準の解説】第2回目をお届けいたします。

 

 

➣ 過年度遡及修正会計基準(会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準)を含む、各種決算業務でお困りの方は、決算開示支援のページをご参照ください。
➣ 過年度遡及修正会計基準(会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準)など、会計処理の方法を手軽に聞きたいという方は、会計オピニオン・監査対応セカンドオピニオンのページをご参照ください。

 

 

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この連載は、過年度遡及修正会計基準の解説を行うことを目的としたものですが、今回は、「会計方針の変更」について、及び「会計方針の変更」をした場合にどのように対応しなければならないかを解説したいと思います。

 

 

1.はじめに

 

「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(企業会計基準第24号)」(以下、「過年度遡及修正会計基準」)は、大きく

 

①「会計上の変更」

②「過去の誤謬の取扱い」

 

に分かれ、さらに

 

①「会計上の変更」は、

 

(1)「会計方針の変更」

(2)「表示方法の変更」

(3)「会計上の見積りの変更」

 

の3つに分けて定義や会計処理が定められています。

 

今回はこのうちの「会計方針の変更」についての解説を行います。

 

 

2.会計方針の変更

 

(1)  会計方針とは

過年度遡及修正会計基準(4項)において、「会計方針」とは、「財務諸表の作成にあたって採用した会計処理の原則及び手続をいう。」とされています。

財務諸表の作成にあたり、企業は様々な会計処理を行う必要がありますが、財務諸表の利用者が財務諸表の理解及び比較を行えるように、会計処理は好き勝手に行えるものではなく、その原則及び手続が多数の会計基準等で定められています。

 

しかし、規模や業態の違い等により、企業の実態は各社バラバラであるため、単一の会計処理の原則及び手続をすべての企業に対して求めることは合理的ではなく、非現実的です。

そのため、会計処理の原則及び手続は「複数」定められているケースが多く、企業の意志により選択適用が可能となっています。

 

会計基準等のルールの範囲内に定められた選択肢の中から企業が採用した会計処理を「会計方針」と言います。

 

(2)  会計方針の変更

「会計方針の変更」とは、従来採用していた「会計方針」を、会計基準等で認められている他の会計処理に変更することをいいます。ただし、以下のようなケースは会計方針の変更には該当しません。(「正当な理由による会計方針の変更等に関する監査上の取扱い(監査・保証実務委員会実務指針第78号)」5項)

 

・  会計上の見積りの変更

・  重要性が増したことに伴う本来の会計処理の原則又は手続への変更

・  新たな事実の発生に伴う新たな会計処理の原則又は手続の採用

 

企業は一度採用した会計方針は、正当な理由により変更を行う場合を除き、毎期継続して適用することが求められます。これは、会計方針が恣意的に変更されることで、利益操作等が行われる可能性があるためです。

しかしながら、正当な理由が存在すれば、会計方針の変更を行うことが可能です。その場合、以下の2通りに分類されます。

 

①     会計基準等の改正に伴う会計方針の変更

 

会計基準等の改正によって特定の会計処理の原則及び手続が強制される場合や、従来認められていた会計処理の原則及び手続を任意に選択する余地がなくなる場合は、正当な理由による会計方針の変更として認められます。この場合の会計基準等の改正には、既存の会計基準等の改正又は廃止や、新たな会計基準等の設定に伴うものも含まれます。

 

②     ①以外の正当な理由による会計方針の変更

 

会計基準等の改正に関わらず、会計方針等を変更する場合であっても、それが企業の実態の変化に即したものである場合は、正当な理由による会計方針の変更として認められます。それに当てはまるものとしては、「正当な理由による会計方針の変更等に関する監査上の取扱い(監査・保証実務委員会実務指針第78号)」8項において、以下の5つの条件が挙げられています。

 

・   会計方針の変更が企業の事業内容又は企業内外の経営環境の変化に対応して行われるものであること。

・   会計方針の変更が会計事象等を財務諸表に、より適切に反映するために行われるものであること。

・   変更後の会計方針が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に照らして妥当であること

・   会計方針の変更が利益操作等を目的としていないこと

・   会計方針を当該事業年度に変更することが妥当であること

 

会計方針の変更が行われる際の監査を受ける際には、以上の5つの条件を満たしているかについて、明確な説明を行うことが求められます。

 

 

3.会計方針の変更時の遡及適用

 

(1)    遡及適用

会計方針の変更の際には、原則として新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用することになります(「過年度遡及修正会計基準」(7項))。このため、新たな会計方針を過去の財務諸表に遡って適用していたかのように会計処理を行い、再計算を行った上で、変更が行われた期間に開示を行うことになります。

 

ただし、会計基準等の改正の際に、会計基準等に特定の経過的な取扱い(適用開始時に遡及適用を行わないことを定めた取扱いなど)が定められている場合には、それに従うことになります。最近では、平成26年3月期から導入される「退職給付に関する会計基準(企業会計基準26号)」においても、改正時には遡及適用を行わない旨が規定されています。これは実務上の負担を考慮しているためと思われます。

 

 

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【関連記事】

 

第1回目:過年度遡及修正会計基準の概要

第2回目:会計方針の変更があった場合の取扱い(今回)

第3回目:表示方向の変更があった場合の取扱い

第4回目:会計上の見積もりの変更があった場合の取扱い

第5回目:誤謬があった場合の取扱い

第6回目:過年度遡及修正の開示

 

 

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