我が国の法律で求められている “内部統制”
内部統制報告制度(J-SOX)対応の実務 | 2012年10月4日今回は、弊社オリジナルの連載特集【内部統制報告制度(J-SOX)対応の実務】第3回目をお届けいたします。
J-SOX対応でお困りの方や、省力化を図りたい方は
「予算利益の達成にコミットしたい」上場会社、上場準備会社の皆様必見
|
前回は内部統制とは何なのかについて、概要を記載させていただきました。今回は、その内部統制が我が国の法律でどのような形で求められているのかについて記載したいと思います。 我が国では内部統制の取り扱いは会社法と金融商品取引法に定められています。
【会社法】
会社法では、大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社)は
「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」
を取締役会で決定しなければならないと定めています(会社法362条4項6号、5項)。
またこれを受けて会社法施行規則100条1項、3項では、会社法362条4項6号に規定する体制について
1 取締役の職務の遂行に関する情報の保存及び管理の体制
2 損失の危険の管理に関する規程その他の体制
3 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保する体制
4 使用人の職務の執行が法令・定款に適合することを確保する体制
5 企業集団の業務の適正を確保する体制
6 監査役の監査が実効的に行われることを確保する体制
を挙げています。
これを見ると、会社法が求める内部統制システムの対象は、業務全般であることが伺えます。
つまり、前回記載した、内部統制の目的である
① 業務の有効性及び効率性
② 財務報告の信頼性
③ 事業活動に関わる法令等の遵守
④ 資産の保全
について、全てが対象となっているのです。
【金融商品取引法】
一方、金融商品取引法では、金融商品取引所に上場している会社は
「事業年度ごとに、当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なものとして内閣府令で定める体制について、内部統制報告書を有価証券報告書と併せて内閣総理大臣に提出しなければならない」
と定めています(金融商品取引法第24条の4の4)。
これは、財務報告に係る内部統制についての報告書の提出を義務付けたものであり、金融商品取引法では、内部統制の4つの目的のうち、
・財務報告に係る内部統制
についてのみ対象としていることを意味しています。
会社としては当然4つの目的全てを達成すべく内部統制を構築すべきです。そのため、会社法では全ての内部統制の目的を達成することを求めているのです。
一方で、金融商品取引法はあくまで証券市場の健全な運営を目的としているため、求める内部統制も「財務報告に係る内部統制」のみに限定しています。
ただ、ご存じのように、金融商品取引法が求める内部統制が厄介なのです。
これにより、いわゆるJ-SOX対応をしなければなりません。内部統制の構築に関し、細かい部分は会社法で規程はありません(つまり会社任せなので、ある意味自由)が、こちらは、細かい部分の対応が具体的に求められています。
次回以降、いよいよ本題としてJ-SOXについて記載していきます。
テーマは、「強弱」 です。重要なところはきちんと対応し、そうでないところは手を抜くことが大事なポイントです。
監査法人から求められた分だけ色々対応しなければならないわけでなく、制度をきちんと守ることを前提とし、その中で自社でポリシーを持って対応すればよいのです。
J-SOXの制度対応は、それ自身が目的ではありません。費用対効果を勘案し、バランス良く対応していければと思います。
今回もお読みいただきありがとうございました。
第2回 そもそも“内部統制”って何?
第3回 我が国の法律で求められている“内部統制” (今回)
第8回 RCM(リスクコントロールマトリクス)の作成方法(J-SOX対応実務⑤)
第10回 コンサルタントやツールの活用法(J-SOX対応実務⑦)
第11回 監査法人が行う内部統制監査への対応(J-SOX対応実務⑧)
第13回 サンプル抽出についての留意点(J-SOX対応実務⑩)
第14回 開示すべき重要な不備について(J-SOX対応実務⑪)
第16回 経営者による内部統制報告書の作成方法(J-SOX対応実務⑬)
「予算利益の達成にコミットしたい」上場会社、上場準備会社の皆様必見
|
【その他のオリジナルレポート】