棚卸資産の会計処理のその他の留意点

棚卸資産会計基準の解説 | 2014年8月19日

今回は、弊社オリジナルの連載特集【棚卸資産会計基準の解説】第5回目をお届けいたします。

 

 

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1.はじめに

 

会計上、棚卸資産は1つの科目名にまとめられていますが、実際は業種等により、その会計処理の実態は異なります。今回は棚卸資産の会計処理の留意点や、一般的には棚卸資産と見なされているものの、会計上は「棚卸資産の評価に関する会計基準(企業会計基準第9号)」(以下、「棚卸資産会計基準」)以外の会計基準の適用対象となるものについて解説を行います。

 

 

2.会計処理上の留意点

 

①  仮単価による精算

取引時には見積りによる仮単価での計上を行い、その後、精算の際には、より厳密に計算した本単価で生産を行う慣行が、化学業界などを中心にみられます。この場合、期末時点までに本単価が決定していない場合には、利用できる情報を集めて出来る限り正確に単価を見積もる必要があります。

 

仮単価と本単価の差額は、金額が大きくない場合には、本単価が決まった時点での収益又は費用として処理することが考えられますが、差額が多額となった場合は、原価差異と同じように配賦計算を行うことが求められると考えられます。

 

②  付随費用の会計処理

棚卸資産の取得価額は、棚卸資産の購入価格及び製造原価の他に、購入時や保管時に生じる付随費用を含めて産出されます。付随費用は、引き取り運賃、購入手数料、関税、荷役費など、外部に対して支払う外部副費(引取費用)と、購入事務手数料、検収費、整理・選別費、保管費など、内部で発生する費用である内部副費に区分されます。

 

会計基準等では外部副費は棚卸資産の取得価額に含めることが求められ、内部副費については会社の任意により取得価額に含めないことが出来るとされていますが、実際には金額的な重要性も勘案して、取得価額に含める範囲を検討することになると思われます。

 

 

3.棚卸資産会計基準以外の会計基準の対象となるもの

 

①  未成工事支出金

仕事の完成に対して対価が支払われる請負契約のうち、土木、建築、造船や一定の機械装置の製造等、基本的な仕様や作業内容を顧客の指示に基づいて行う契約については、工事契約として、「工事契約に関する会計基準(企業会計基準第15号)」及び「工事契約に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第18号)」の対象となります。

 

工事契約の収益の認識基準は、工事の進行途上においても収益を認識することができる工事進行基準と、工事が完成し引き渡しが行われた時点で収益を認識する工事完成基準の2つに分かれます。工事契約や工事の進行途上においてもその進捗部分について成果の確実性が認められる場合には工事進行基準を適用し、要件を満たさない場合には工事完成基準を適用します。

 

工事の完成・引渡しまでに発生した工事原価は、「未成工事支出金」等の適当な科目をもって、貸借対照表の資産として計上されます。また、工事から損失が発生することが見込まれる場合は、工事損失引当金を負債として計上します。開示の際は未成工事支出金と工事損失引当金を相殺して表示することも認められています。

 

②  販売用ソフトウェア

ソフトウェア会社等が販売用に保有するソフトウェアは、財務諸表上は無形固定資産として計上されます。ソフトウェアの実態は商品の一種ともいえますが、通常の棚卸資産とは違い、実物として存在する部分はCDやDVDなどの光ディスク等のわずかな部分であり、無形の部分の価値が大部分を占めます。このため、企業が開発を行った知的財産という側面を重視し、棚卸資産ではなく、無形固定資産として計上され、実務上は「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い(実務対応報告第17号、企業会計基準委員会)」に従い、会計処理が行われます。

 

ソフトウェアの評価額は開発に要した費用から研究開発費を除いた部分となりますが、ソフトウェアの販売により、将来に獲得が見込まれる収益が簿価を下回る場合は、固定資産の減損会計の対象となります。ソフトウェアに関連する業界は、技術革新の速度が速いことが多く、ソフトウェアの将来の収益の見積りについては慎重な判断を行うことが求められます。

 

また、特定のユーザー向けに制作及び提供を行う、受注製作のソフトウェアについては、「工事契約に関する会計基準」の対象となります。

 

さて、以上で【棚卸資産会計基準の解説】のお話は終了となります。いかがでしたでしょうか。分かりにくい表現も多々あったかと存じますが、何卒ご容赦いただければ幸いです。

 

ご精読いただきまことにありがとうございした。

 

 

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第3回目:滞留・処分見込みの棚卸資産の期末評価

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第5回目:棚卸資産の会計処理のその他の留意点(今回)

 

 

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