過年度遡及修正の開示
過年度遡及修正会計基準の解説 | 2014年3月15日今回は、弊社オリジナルの連載特集【過年度遡及修正会計基準の解説】第6回目をお届けいたします。
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この連載は、過年度遡及修正会計基準の解説を行うことを目的としたものであり、今回が最終回です。
1.はじめに
ここでは「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(企業会計基準第24号)」(以下、「過年度遡及修正会計基準」)、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針(企業会計基準適用指針第24号)」(以下、「過年度遡及修正適用指針」)に基づく開示方法について解説します。
2.遡及修正の例
① 会計方針の変更に関する原則的な取扱い
会計方針の変更を行った場合の原則的な取扱いの方法としては、新たな会計方針を過去のすべての期間に遡及します。開示内容として、以下の内容を注記します(過年度遡及修正会計基準10項)。
(1) 会計方針の変更の内容
(2) 会計方針の変更を行った正当な理由
(3) 表示期間のうち、過去の期間について、影響を受ける財務諸表の主な表示科目に対する影響額及び1株当たり情報に対する影響額。
(4) 表示されている財務諸表のうち、最も古い期間の期首の純資産の額に反映された、表示期間より前の期間に関する会計方針の変更による遡及適用の累積的影響額。
(5) 原則的な取扱いが実務上不可能な場合には、その理由、会計方針の変更の適用方法及び適用開始時期。
主な表示科目としては、損益計算書の科目として、売上高、売上原価、営業損益、経常損益、税金等調整前等基準損益があげられます。貸借対照表の科目への影響額については、損益計算書の科目への影響額の開示により分かる場合は、通常、注記されることは多くありません。
例 会計方針の変更により、売上高の金額が変更となった場合
当社における○○○の方法は、従来、○○○(従来の会計方針)によっておりましたが、この変更は、○○○(正当な理由)のため、当連結会計年度より○○○(新たな会計方針)に変更しております。当該会計方針の変更は遡及適用され、前連結会計年度については、遡及適用後の連結財務諸表となっております。 この結果、遡及適用を行う前と比べて、売上高、売上原価が○○○円減少し、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益が○○○円減少しております。
(参考:過年度遡及修正適用指針 説例1-1) |
しかしながら、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更の際に、会計基準等に特定の経過的な取扱いが定められている場合には、その経過的な取扱いに従います。
② 会計上の見積りの変更に関する原則的な取扱い
会計上の見積りの変更を行った場合の影響は、過去には及ばないことから、当該変更期間の影響についてのみを注記します(過年度遡及修正会計基準18項)。
(1) 会計上の見積りの変更の内容
(2) 会計上の見積りの変更が、当期に影響を及ぼす場合は当期への影響額、当期への影響がない場合でも将来の期間に影響を及ぼす可能性があり、かつ、その影響額を合理的に見積ることができるときには、当該影響額。ただし、将来への影響額を合理的に見積もることが困難な場合には、その旨
また、会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合についは、会計上の見積りの変更と同様の注記を行います。
例 会計上の見積りの変更により、減価償却額が変更となった場合
当社が保有する○○○は、従来、○○○(従来の減価償却の方法)により減価償却を行ってきましたが、当連結会計年度より○○○(正当な理由)のため、○○(新たな減価償却の方法)に見直し、将来にわたり変更しております。 この変更により、従来の方法と比べて、当連結会計年度の減価償却費が○○○円減少し、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益が○○○円増加しております。
(参考:過年度遡及修正適用指針 説例3) |
③ 表示方法の変更に関する注記
表示方法の変更を行った場合は、原則として過去の財務諸表に遡及して組替が必要となります。また、以下の4つを注記します(過年度遡及修正会計基準16項)。
(1) 財務諸表の組替えの内容
(2) 財務諸表の組替えを行った理由
(3) 組替えられた過去の財務諸表の主な項目の金額
(4) 原則的な取扱いが実務上不可能な場合には、その理由
例 金額的重要性が増したことにより、独立掲記する場合
前連結会計年度において、○○○(流動資産等の大項目)の○○○(科目名)に含めていた○○○(科目名)は、○○○(資産、負債、営業外損益項目、特別損益項目等)の総額の100分の○○(数値)を超えたため、当連結会計年度より独立掲記しております。この表示方法の変更を反映させるため、前連結会計年度の連結財務諸表の組替えを行っております。 この結果、前連結会計年度の○○○(連結損益計算書又は連結損益計算書)において、○○○(流動資産等の大項目)の○○○(科目名)に表示していた○○○(科目名)は、○○○円は、○○○(科目名)として組み替えております。
(参考:過年度遡及修正摘要指針 説例2) |
④ 過去の誤謬の修正再表示を行った場合の注記
過去の誤謬の修正再表示を行った場合には、次の事項を併せて注記することが求められます(過年度遡及修正会計基準22項)。
・ 過去の誤謬の内容
・ 表示期間のうち過去の期間について、影響を受ける財務諸表の主な表示科目に対する影響額及び1株当たり情報に対する影響額
・ 表示されている財務諸表のうち、最も古い期間の期首の純資産の額に反映された、表示期間より前の期間に関する修正再表示の累積的影響額。
例 売上に関する過去の誤謬の修正再表示
当社において、○○○となっていた(過去の誤謬の内容)。前連結会計年度の連結財務諸表は、この誤謬を訂正するために修正再表示しております。 修正再表示の結果、修正再表示を行う前と比べて、前連結会計年度の連結貸借対照表は、○○○(科目名)が減少し、連結損益計算書は売上高が○○○円減少し、営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益がそれぞれ同額減少し、少数株主損益調整前当期純利益及び当期純利益が○○○円減少しております。
(参考:遡及適用指針 説例5) |
2.今後に向けて
過年度遡及修正会計基準が平成24年4月1日から適用が開始され、事例も蓄積されつつあります。企業においては、通常の業務において誤りが生じることがないように、内部統制の構築を行うとともに、万が一、誤謬が生じた場合は速やかな対応が可能なように、人材を育成することが求められます。
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【関連記事】
第1回目:過年度遡及修正会計基準の概要
第2回目:会計方針の変更があった場合の取扱い
第3回目:表示方向の変更があった場合の取扱い
第5回目:誤謬があった場合の取扱い
第6回目:過年度遡及修正の開示(今回)
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