経営者による内部統制報告書の作成方法(J-SOX対応実務⑬)

今回は、弊社オリジナルの連載特集【内部統制報告制度(J-SOX)対応の実務】第16回目(最終回)をお届けいたします。

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内部監査支援、J-SOX対応支援

内部統制報告書は、そのフォームが決まっているため、実務的には他社例等を参照しながら、手間をかけずに作成します。第15回までに記載したとおり、内部統制の評価手続のボリュームは非常に大きいのですが、その青果物である報告書自体はとてもあっさりしたものです(表紙を除き、A4用紙1枚半程度のボリューム)。

金融庁が運営しているEDINET(http://info.edinet-fsa.go.jp/)に上場会社の内部統制報告書が掲載されているため、興味があればどこの会社でもよいので、ご参照いただければと思います。

なお、本稿では「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」(以下「基準」といいます)で求められている内部統制報告書の記載項目をご紹介するとともに、ちょっとした解説を行いたいと思います。

目次

【内部統制報告書の記載項目】

基準では、内部統制報告書に、次の記載を求めています。

(1) 整備及び運用に関する事項
(2) 評価の範囲、評価時点及び評価手続
(3) 評価結果
(4) 付記事項

(1)整備及び運用に関する事項

いずれも定型記載事項ですが、内部統制報告書の冒頭に下記を記載します。

① 財務報告及び財務報告に係る内部統制に責任を有する者の氏名
② 経営者が、財務報告に係る内部統制の整備及び運用の責任を有している旨
③ 財務報告に係る内部統制を整備及び運用する際に準拠した一般に公正妥当と認められる内部統制の枠組み
④ 内部統制の固有の限界

上記については特に解説すべき事項は含まれておりません。他社例をご覧いただくと良いかと思います。

(2)評価の範囲、評価時点及び評価手続

① 財務報告に係る内部統制の評価の範囲(範囲の決定方法及び根拠を含む。)
② 財務報告に係る内部統制の評価が行われた時点
③ 財務報告に係る内部統制の評価に当たって、一般に公正妥当と認められる内部統制の評価の基準に準拠した旨
④ 財務報告に係る内部統制の評価手続の概要

なお、会社によって「①評価範囲」「④評価手続の概要」については多少記載が異なりますが、これも他社例を参照に、実際に貴社で取り組んだ内容に置き換えればよいでしょう。この辺については柔軟な記載が求められますが、数社分の他社例を用意し、言い回し等、良いとこ取りをすればよいでしょう。

(3)評価結果

財務報告に係る内部統制の評価結果の表明には、以下のパターンがあります(いずれの評価結果とするかは監査意見に影響を与えるため、監査法人と刷り合わせすることが必須)。

① 財務報告に係る内部統制は有効である旨
② 評価手続の一部が実施できなかったが、財務報告に係る内部統制は有効である旨並びに実施できなかった評価手続及びその理由
③ 開示すべき重要な不備があり、財務報告に係る内部統制は有効でない旨並びにその開示すべき重要な不備の内容及びそれが是正されない理由
④ 重要な評価手続が実施できなかったため、財務報告に係る内部統制の評価結果を表明できない旨並びに実施できなかった評価手続及びその理由

通常は上記のうち①となります。末尾に添付した他社例も、①を前提とした評価結果の記載となっています。

なお、仮に②~④の意見表明となる場合も、他社例等を参照に記載すればよいでしょう。貴社担当者が他社例を見つけられない場合は、監査法人やコンサルタントに相談すればすぐに用意してくれるでしょう。

(4)付記事項

付記事項には下記を記載します。

① 財務報告に係る内部統制の有効性の評価に重要な影響を及ぼす後発事象
② 期末日後に実施した開示すべき重要な不備に対する是正措置等

次年度以降の内部統制の有効性の評価に重要な影響を及ぼす後発事象がある場合に①を、または、期末日において開示すべき重要な不備があったものの、期末日後から内部統制報告書提出日までに重要な欠陥を是正した場合に②を記載します。

②では、期末日時点における内部統制が有効でない場合でも、期末日後に開示すべき重要な不備を是正し、評価を完了していれば、内部統制報告書提出日時点における内部統制が有効である旨を記載することができます。

さて、以上で【内部統制報告制度(J-SOX)対応の実務】のお話は終了となります。いかがでしたでしょうか。分かりにくい表現も多々あったかと存じますが、何卒ご容赦いただければ幸いです。

ご精読いただきまことにありがとうございした。

J-SOX連載

第1回 内部統制報告制度(J-SOX)って何?
第2回 そもそも“内部統制”って何?
第3回 我が国の法律で求められている“内部統制”
第4回 J-SOX全体像(J-SOX対応実務①)
第5回 全社的内部統制のポイント(J-SOX対応実務②)
第6回 決算財務報告統制のポイント(J-SOX対応実務③)
第7回 業務処理統制のポイント(J-SOX対応実務④)
第8回 RCM(リスクコントロールマトリクス)の作成方法(J-SOX対応実務⑤)
第9回 整備状況の評価方法(J-SOX対応実務⑥)
第10回 コンサルタントやツールの活用法(J-SOX対応実務⑦)
第11回 監査法人が行う内部統制監査への対応(J-SOX対応実務⑧)
第12回 運用状況の評価方法(J-SOX対応実務⑨)
第13回 サンプル抽出についての留意点(J-SOX対応実務⑩)
第14回 開示すべき重要な不備について(J-SOX対応実務⑪)
第15回 不備金額の集計方法(J-SOX対応実務⑫)
第16回 経営者による内部統制報告書の作成方法(J-SOX対応実務⑬)(今回)

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この記事を書いた人

公認会計士・税理士
監査法人トーマツでのIPO支援業務などを経て現在に至る。
企業の役員、アドバイザーに就任し、主に財務面からの経営戦略の立案・実行支援や管理体制の構築支援を中心に各種コンサルティング業務を提供。
バリュエーション業務の実績多数。

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