ストックオプションに関する解説
新株予約権、ストックオプションの実務 | 2017年4月13日今回は、弊社オリジナルの連載特集【新株予約権、ストックオプションの実務】第5回目をお届けいたします。
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1.はじめに
ここでは、ストック・オプションについて解説します。ストック・オプションを導入する企業は、広がりを見せており、対応して法令等の整備も進んでいます。また、先行事例も数多く参照できるようになったため、利用に向けてのハードルは下がっています。
2.ストック・オプションて何?
ストック・オプションは、新株予約権のうち、特に企業がその従業員等に報酬として付与するものをいいます(ストック・オプション等に関する会計基準2項(2))。ここでいう従業員等には、企業と雇用関係にある使用人のほか、取締役、会計参与、監査役及び執行役並びにこれに準ずるものが含まれます(同2項(3))。
企業が役員及び従業員に対して支払う報酬は、通常、金銭により支払われます。ストック・オプションはこれを金銭ではなく、株式を取得する権利である新株予約権の形で付与するものです。
3.ストック・オプションの権利行使条件
ストック・オプションの行使には、条件が付されていることが通常であり、この権利確定条件を充たすことで、株式の取得が可能になります。主な権利確定条件には、勤務条件及び業績条件があります。
- 勤務条件…従業員等の一定期間の勤務や業務執行に基づく条件(同2項(10))
- 業績条件…一定の業績(株価を含む。)の達成又は不達成に基づく条件(同2項(11)
勤務条件を付すことにより、役員や従業員を問わず、優秀な人材の流出を防止する効果が期待されるとともに、短期的な視点での利益追求に走ることを抑えることも期待出来ます。勤務条件は従業員については、一定の勤続年数を重ねることにより充たされることが多く、役員については、これに業務執行に基づく条件が加えられることが多くあります。
4.ストック・オプションのメリット
企業から役員への報酬の支払においては、業績に連動した役員報酬体系がとられている企業も存在しますが、業績連動の指標を客観的に決定するのは難しく、企業価値の向上に貢献するインセンティブを与えづらい状況にあります。同一企業であっても、各役員により担当や権限等にも違いがあるため、一律に定めることが難しく、また、変動型の役員報酬は、税務上の取扱いが論点となることも多くあります。
また、従業員に対する給与については、個人の成績や能力に応じた査定により、ある程度の差がつけられますが、企業の業績の変動自体は、ベースアップや賞与の形で、従業員給与に間接的に反映されるものの、企業価値の向上に伴う利益を従業員に直接与えることは、困難が伴います。このため、従業員が会社の業績向上を、給与により実感することが難しくなります。
ストック・オプションは、権利の行使により最終的には株式となることから、上場企業においては、ストック・オプションの価値は株価により示されることになります。企業価値の向上により、株価が上昇すれば、役員及び従業員の報酬の増加につながります。このため、役員及び従業員が企業価値の向上のためにより積極的に業務に励むインセンティブを与えることが可能になります。
さらに権利の行使に先立ち、権利確定条件として業績条件を付すことで、インセンティブをさらに強めることが期待されます。
5.ストック・オプションのデメリット
ストック・オプションの価値は株価と密接に関わりますが、株価は市場全体の動向や一時的な投機的取引等により変動するため、その企業の企業価値を常に客観的に示しているとは限らず、役員及び従業員が企業価値の向上のために業務に励んだとしても、必ずしも株価に反映されるとは限らないという問題があります。
ただし、長期的には、株価は企業価値を反映するような価格帯に収束することが予想されることから、長期的な視点で考えると、ストック・オプションによるメリットが企業と役員及び従業員の双方に生じることが期待されます。
また、勤務条件を一定期間の長さに設定することで、役員及び従業員が長期的視点を欠き、短期的な利益追求に走ることを防ぐ効果も期待できます。
6.まとめ
ストック・オプションは、有効に活用することにより、役員や従業員の勤務意欲を高めることにより、業績の向上に資する効果が期待できます。しかしながら、導入したものの株価が大きく下落するような事態になれば、かえって、勤務意欲を削ぐ恐れもあるため、その制度設計は慎重に行う必要があります。
では、今回はこの辺で失礼いたします。お読みいただきありがとうございました。
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第1回 新株予約権って何?ストックオプションって何?
第2回 新株予約権を導入する意義(メリット・デメリット)
第3回 新株予約権を発行する際の会社法上の手続きの留意点
第4回 新株予約権を発行する際の金商法上の手続きの留意点
第5回 ストックオプションに関する解説(今回)
第6回 新株予約権の税務上の留意点
第7回 新株予約権の会計処理
第8回 新株予約権の評価方法
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