過年度遡及修正会計基準の概要
過年度遡及修正会計基準の解説 | 2013年9月15日今回は、弊社オリジナルの連載特集【過年度遡及修正会計基準の解説】第1回目をお届けいたします。
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この連載は、過年度遡及修正会計基準の解説を行うことを目的としたものですが、そのためには、まずはじめに、過年度遡及修正会計基準とは何なのかといっった概要について、簡潔にご理解いただければと思います。
1. はじめに
「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(企業会計基準第24号)」いわゆる過年度遡及修正会計基準が平成21年12月4日に制定され、平成24年3月期以降に適用が開始されてから、現在の年度で3年目となります(3月決算会社の場合)。この間に様々な解釈が行われ、また開示例が蓄積されてきたことを受け、今回は本会計基準及び遡及適用についての解説を行います。
2. 「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」について
① 設定された目的
「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」が制定された主な背景には、財務諸表の期間比較可能性の確保にあります。「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する基準」はその名前が示すとおり、内容は、会計上の変更である会計方針等(会計方針・表示方法・会計上の見積り)の変更の取扱いの解説と、誤謬の訂正についての取扱いの2つに大きく分かれます。このため、それぞれについて解説します。
② 会計方針等の変更
従来の財務諸表では、会計方針等が変更された場合は、その変更が行われた会計期間から後については、変更後の会計方針等に従い財務諸表が作成されていましたが、変更前の会計期間の財務諸表は、変更前の会計方針等に従い作成されていました。このため、変更前と変更後の財務諸表を比較した際に、双方に適用されている会計基準等が異なるため、場合によっては期間比較が困難となることがありました。また、会計方針等の変更を利用して利益操作等が行われる可能性もあり、この場合、財務諸表の公表を通じて利害関係者に適切な情報を開示するということが行われなくなるおそれがあります。このため、改正後は取扱いが変更されることになりました。
会計方針等の変更の取扱いの解説は、以下の3つに大きく分かれます。
・ 会計方針の変更
・ 表示方法の変更
・ 会計上の見積りの変更
改正後は会計方針の変更と表示方法の変更については変更が行われた会計期間より前に遡って変更を遡及適用し、変更前の期間についても変更後の会計方針に従って財務諸表を作成し直すことが原則となりました。一方、会計上の見積りの変更については、新しい情報によってもたらされる変更であることから、原則として遡及する必要がありません。
(例)会計方針の変更の取扱い…X2年3月期に会計方針を変更した場合
X1年3月期 (会計方針の変更前の期間) |
X2年3月期 (会計方針の変更した期間) |
|
改正前 |
変更前の会計方針を適用 |
変更後の会計方針を適用 |
改正後 (原則) |
変更後の会計方針を遡及適用 |
変更後の会計方針を適用 |
③ 誤謬の訂正
過去の財務諸表の作成において誤謬等が生じていた場合、従来は誤謬があることが発覚した時点で、発覚した時点の属する会計期間において前期損益修正項目として処理を行っていました。しかしながら、そのような処理を行うと、原因について本来反映すべき会計期間ではなく、発覚した時点の会計期間に反映されることになり、会計数値が歪められることになります。また、会計法威信等の変更と同じく、場合によっては利益操作に利用されるおそれがあります。
このため、改正後は誤謬の原因が発生した会計期間の財務諸表を修正することが原則となりました。
(例)誤謬の訂正の取扱い…X1年3月期に原因が生じた誤謬がX2年3月期に発覚した場合
X1年3月期 (誤謬の原因が発生した期間) |
X2年3月期 (誤謬が発覚した時点の期間) |
|
改正前 |
修正しない |
前期損益修正項目として修正する |
改正後 (原則) |
修正する |
特に処理を行わない |
3. 今後の解説
改正により会計方針等の変更や誤謬が発生した場合の取扱いが大幅に変更されることになりましたが、財務諸表を遡及して修正することは作成する企業にとって大きな負担を伴うおそれがあります。このため、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」等においては原則以外の会計処理も場合によっては認められています。
今後はこれらも含め、会計基準等の詳細及び実務上の取り扱いについて解説を行います。
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【関連記事】
第1回目:過年度遡及修正会計基準の概要(今回)
第2回目:会計方針の変更があった場合の取扱い
第3回目:表示方向の変更があった場合の取扱い
第5回目:誤謬があった場合の取扱い
第6回目:過年度遡及修正の開示
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