監査法人が行う内部統制監査への対応(J-SOX対応実務⑧)
内部統制報告制度(J-SOX)対応の実務 | 2013年2月15日今回は、弊社オリジナルの連載特集【内部統制報告制度(J-SOX)対応の実務】第11回目をお届けいたします。
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今回のタイトルを見ると、監査法人が行う内部統制監査に対して特別な対応が必要であるように見られますが、結論的から述べますと、通常は特別な対応は必要ありません。
イメージ的には、監査法人の内部統制監査は、財務諸表監査のように既存の会社の書類を見て、必要なもの(既存の資料等)を依頼してくるという感じです。会社が実施する内部統制の評価手続きが、あらかじめ監査法人と合意した内容であれば、追加で作成すべき資料もないでしょう。
というのも、監査法人が行う内部統制監査は、あくまで経営者(会社)が作成した内部統制報告書が、一般に公正妥当と認められる内部統制の評価の基準に照らして適正であるかを検証するものだからです。
監査法人は、直接的に企業の内部統制の整備及び運用状況を検証するのではなく、あくまで経営者(会社)の主張(内部統制が有効か否かの評価)を前提とし以下のプロセスを経て監査意見を表明することとなります。
① 経営者(会社)が決定した内部統制の評価範囲の妥当性を検証する
② 内部統制の整備状況及び運用状況の有効性に関する経営者(会社)の評価結果の妥当性を検証する
仮に、上記の①について、監査法人と意見が合わないまま会社独自の方法で内部統制の評価範囲(評価対象とする事業拠点、評価対象とする勘定科目等)を決定してしまう場合、監査法人は自身が必要だと判断する評価範囲の検証ができないこととなります(つまり、監査範囲に制約がある)。そのため、監査法人は監査意見に限定をつけるか、意見不表明のいずれかの対応をとることとなります。
それは会社にとっても監査法人にとっても望ましいことでありません(監査法人も限定なしの適正意見(無限定適正意見)を表明したいのです)。そのため、内部統制の評価範囲については、実際に評価を行う前に、会計期間の早い段階で会社と監査法人で合意しておくことが通常となります。
以上より、監査法人が行う①の業務に対して特別な対応が不要であることがうかがえます。なお、当然、会社の評価手続きの一環として評価範囲の決定プロセスを記録しておく必要がありますが、それは監査法人の監査のために行うのではありません。
また、②についても、会社(内部監査室等)が行う「内部統制の評価」と、監査法人が行う「内部統制の評価の検討」は進め方が同じであるため、これも特別な対応が必要なわけではありません。
監査法人は、会社が行った内部統制の評価について、その記録の閲覧や、経営者・担当者等への質問、再実施(ウォークスルー(第9回参照)や運用状況の評価(第12回参照)等を独自で行う)などを通じて、その適正性を検討します。
つまり、監査法人は基本的に会社が実施した評価手続きをなぞるのであり、それに対して特別な準備は無用なのです。
しいて準備しなければならないことを挙げるとすれば、ウォークスルーや運用状況の評価の検討において、会社が評価したのと違うサンプルで評価手続きを再実施するため、これらの書類をタイムリーに監査法人に提供できるように書類整理をしておくことくらいでしょう。
J-SOXで重要なことは、監査法人としっかり方針を確認しながら評価手続きを進めていくことです。監査法人の監査の一環で質問を受けたり、書類を依頼されても、それは会社が実施した評価手続きの範囲内のものであるため、慌てることはありません。
ただし、監査法人と認識が違う方法で独自の評価手続きを実施する場合、今回の話は大きく覆るかもしれません(対応すべきことがいっぱい出てくるでしょう)。しかしそれは、作業効率の悪化や、望ましくない監査意見の表明に繋がり、会社にとっても監査法人にとっても望ましくありません。
まずはJ-SOX対応の前に上記重要点(監査法人と足並みをそろえて進めるということ)を再確認いただければと思います。
では、今回はこの辺で失礼いたします。お読みいただきありがとうございました。
第2回 そもそも“内部統制”って何?
第8回 RCM(リスクコントロールマトリクス)の作成方法(J-SOX対応実務⑤)
第10回 コンサルタントやツールの活用法(J-SOX対応実務⑦)
第11回 監査法人が行う内部統制監査への対応(J-SOX対応実務⑧)(今回)
第13回 サンプル抽出についての留意点(J-SOX対応実務⑩)
第14回 開示すべき重要な不備について(J-SOX対応実務⑪)
第16回 経営者による内部統制報告書の作成方法(J-SOX対応実務⑬)
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